センチな建築物 (製作者:してきや)
恋愛シミュレーションゲーム「センチメンタルグラフティ」(アニメ「センチメンタルジャーニー」)に登場した建築物を鉄道模型ストラクチャーを利用して1/150模型化しました。

 

安達酒店

まだ大垣で学生をやっていた頃のお話。秋の学園祭を控えた時期に友人のくまら氏がアニメ「センチメンタルジャーニー」の録画テープを持って下宿にやってきた。もちろん12話全てを見る時間はないので自分たちの好きなキャラの話を中心に見たのだが、11話の安達妙子の話を見ていてくまら氏が一言「安達酒店の建物、グリーンマックスの"切妻2階建ての商家"に似てない?」。ビデオを一時停止にしてGMカタログの写真と見比べてみると、細部に違いはあるものの店構えといい雰囲気といいよく似ているではないか。鉄研の模型レイアウト用に何か作ろうと考えていたので、これは模型化するしかない! というわけで翌日模型屋でGMのキットを2人して購入「学園祭を目標に競作する」ことを約束したのである。
   ■組立て・塗装■
ベースとなったキットは前述のようにGMの「切妻2階建ての商家」。キットをほぼストレートに組んだが、正面左隅のショーケース状の出窓は撤去しプラ版で埋めた。塗装はMrカラーを適当に調合して筆塗り。GMカタログの解説では鉄道車両のようにマスキングしてスプレー塗装するように書かれているが、木造建築の場合多少のムラがあったほうがそれらしく見えるような気がするのであえて筆塗りした。特に瓦屋根は部分によって色の濃淡を付けるとぐっと実感的になる。屋根と壁はつや消しで、柱などの木の部分は半光沢で仕上げた。

   ■店の看板■
建物部分は一晩で完成し、あとはこの模型の肝ともいえる「安達酒店」の看板である。パソコンで制作することは決まっていたが当時の私はパソコンを持っておらず、大学鉄研所有のパソコンにもグラフィックソフトなど入っていない。当初はワープロソフト(Word97)で茶色に白抜きで「安達酒店」の文字を作成しようとしたが、看板上部にある「∧」と「安」を組み合わせた社紋?が上手く作れない。仕方が無いのでWindows標準装備の「MSペイント」で茶色の塗りつぶしを作り、そこにWordの文字をコピーして作成した。例の社紋は「金」などの文字をコピーして部首部分以外を消し、その下に「安」の文字をコピーした。この方法の難点はドットが荒くなるためコピーした文字が潰れて読みにくくなること。細かな修正が要求される。
   ■自動販売機■
看板も完成した。しかしまだ実感が湧かない。そう、自動販売機がないのだ。アニメの映像を見ると店の前に5台ほど自販機が並んでいる。自販機は酒屋をはじめ現代の商店には欠かせないアイテムであるが、Nゲージストラクチャーとしては商品化されていない。と言っていたら雅WORKSの雅氏が「自販機キット」なるものを制作したので、活用した。このキット、グラフィックソフトで自販機の「展開図」状の絵を作成してハガキザイズの紙にプリントアウトしただけの単純なものだが、カッターで切りぬいて組み立てるとそれらしい仕上がりとなる。種類は○カコーラや○プシ、酒屋には欠かせない細長のワンカップ用、さらにはあの○ッコールまである。製品の注意書きにも「この商品は想像の産物であり、実在する会社並びに"宗教団体"とは一切関係ありません」などと書かれているほど。これらを店の正面に並べて接着し、かなり実感的になってきた。

   ■ホーロー看板■
しかしまだ足りない。古い酒屋といえば「ホーロー看板」。自称「ホーロー看板研究家」の私としてはぜひ欲しいアイテムである。当初は実物の写真をスキャナで取り込み縮小してプリントする予定だったが、もともとおふざけで作っている模型なので看板もふざけた方が良い。前述のペイント利用の方法で架空の看板を作成した。内容は「清酒 木之本桜」「酒は 丹下桜」「むぎ焼酎 綾波」という、見る人が見れば笑ってしまうがそれらしい名前を選択(ほかに"丹下桜学生服"なんてのもある)。これで付加価値が高まった?
こうして「安達酒店」はわずか数日で完成。センチ云々は抜きにしても「古い酒屋」のストラクチャーとして上手くまとまったと思う。店の前に津川洋行の「ミゼット」や「スーパーカブ」を置くとさらに雰囲気が出てよろしいようですよ。

 

お好み焼き おたふく

「安達酒店」の次はやっぱり自分のひいきキャラのを作らなきゃ、というわけで森井夏穂の「お好み焼きおたふく」である。この「おたふく」製作には困難を極めた。なんといっても資料が少ないのである。ゲームでは店の外観は出ないに等しいし、ジャーニーでも店の入り口付近と2階にある夏穂の部屋のアップしか登場しないのである。しかし友人たちに「学祭にはおたふくを展示する」と宣言してしまった以上、もう後には引けない。こうなったら意地でも作るのだ〜。

「安達酒店」は良く似た市販キットが流用できたが「おたふく」ではそうはいかない。「フルスクラッチ」(笑)に挑戦である。素材は何と「ククレカレーの空き箱」と「割り箸」!(プラ材も併用しているが)。なんと地球に優しいリサイクル模型であろうか(セコイという話もある)。参考資料はアニメの映像に頼るしかない。店の出る場面を一時停止にして観察するが、当然ながら店の全体像を掴むことは出来ない。仕方が無いのでほとんどの部分を「想像」で作ることにした。製作に取り掛かったのは学祭の一週間前。バイトを休み部室泊まり込みで準備、という切羽詰まった状況でのスタートである。

   ■壁・柱■
まずはビデオを参考にほとんど想像で書いた設計図をもとにカレーの箱にケガキをし、それを切り抜いて壁部分を作る。次にこの壁をゴム系接着剤で接着して箱にするが、このとき壁の四隅に「柱」となる3mmプラ棒を接着する。これだけでは強度に不安があるため、柱の上や壁の柱間の横方向に補強用の割り箸を接着している

   ■屋根■
ビデオを見てこの建物は「木造モルタル塗り」であると判断し、屋根はGM製「瓦屋根」を使用。そのままでは実感的でないので継ぎ目の部分にランナー引き延ばし線を埋め込んで「棟瓦」とし、両端に瓦屋根の付属品である「鬼瓦」を接着。GMのキットに比べてチャチな感じだが、何もしないよりはマシである。

   ■窓周辺■
窓枠は裏から0.3tプラ板を張りつけて表現したが、店入り口部のみ透明プラ板にマスキング&塗装を施し、キットのような「窓枠印刷済み透明プラ板」を製作(あまり上手くいかなかったが)。アニメでは2階夏穂の部屋の窓に落下防止の手すり?と雨戸の戸袋があったので、鉄研の部室に転がっていたGMの「商店セット」の余りパーツを使用した。

   ■塗装■
安達酒店で「手塗りにした方が実感的」と言ったにもかかわらず、店正面部分はエアブラシでGM鉄道カラー「小田急アイボリー」を吹いた。モルタル塗りの壁は均一に塗った方が実感的ではないか、という判断である。側面の壁と屋根はムラを出すため筆塗りしたが、困ったことになぜかムラなく塗れてしまった。

   ■看板■
ここで困ったことが起きた。夏穂のお好み焼き屋はゲームとアニメでは店の名前が違うのである。ゲームでは「おたふく」、アニメでは「もりや」であり、どちらを選択したらよいか迷った。アニメを参考にしているので本来なら「もりや」にすべきだが、ファンの間ではゲームの「おたふく」のほうが定着しているので、結局はアニメ版のデザインを参考にしつつも名前を「おたふく」にすることで決着した。看板はパソコンを使用して安達酒店同様の方法で製作した。
こうしてなんとか学祭までに完成。一応それらしい仕上がりにはなったと思う。欲を言えば店入り口横にビールのケースを置くとさらに実感的になるのだが、突貫工事で仕上げたのでさすがにそこまでする余裕は無かった。

この二つの建物は学園祭の鉄道研究会レイアウトのなかに設置し、公開した。一般人には理解されなかったが、私の友人やセンチを知る他サークルの人間にはバカウケであった。今後は保坂美由紀の「保坂次郎左ェ門商店」とか、山本るりかのバイトする「ローソン大須二丁目店」なんかも作れたらいいなー、なんて馬鹿なことも考えています。

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